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EBVは要チェック!

皮膚科から依頼をいただいていた、伝染性単核球症の患者様が退院されました。当初は全身の皮疹も酷く(結局は他院で先行投与されていなABPCが原因でした)、かなり倦怠感も強かったことから色々な疾患を鑑別に挙げていたんですが・・・結局EBVによる症状でした。メデタシメデタシ。

・・・で終わっていたらダメなので、Epstein-Barr ウイルスについておさらいしておきましょう。EBVはヘルペスウイルス科に属し、約40年前にバーキットリンパ腫から発見されたヒトがんウイルスの第一号です。本邦では3歳頃には約70%が、成人では90%以上の人が感染しています。リンパ球B細胞に強く発現しているCD21分子をレセプターとして持続感染しますが、多くの場合は宿主のCTL(細胞傷害性Tリンパ球)とウイルスの間でバランスのとれた状態(潜伏感染状態)でいます。でも、宿主の体調不良や免疫能の低下時には、鼻咽腔でウイルスの再活性化が起こり、種々の病態を起こします。その病態は、有名な伝染性単核球症以外に、上咽頭癌、胃癌(本邦の胃癌の約10%)、NK/T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫などなど、厄介なものだらけです。また、頻度は少ないのですが、慢性活動性EBウイルス感染症は血球貪食症候群を併発したり、最終的に多臓器不全や悪性リンパ腫などを発病することで依然高い致死率を示す予後不良の疾患です。

で、今回の伝染性単核球症ですが、EBVに感染したB細胞を攻撃するCTLの爆発的な動員により引き起こされる病気です(厳密には感染症じゃないんですね~)。若年成人においての潜伏期間は約4~6週間で、疲労感、倦怠感および筋痛が、発熱(実は感度の報告はバラバラ)、咽頭炎およびリンパ節腫脹(溶連菌に比べて圧痛は軽度)の開始前の1~2週間持続します。リンパ節腫脹(後頸部~全身)および咽頭炎は症候期最初の2週間に最も顕著になります。リンパ節腫脹自体の感度は高く80~90%と言われています。“後頸部”っていうのが大きなポイントで、リンパの流れを考えると、全身性の疾患を考慮するキーワードです。その他、第2~3週目には脾腫がより著明(実際に触知することは少ない)になり、5~10%程度に腕または体幹に麻疹状皮疹または丘疹性皮疹がみられます。

ちなみにハリソンでは鑑別疾患としてサイトメガロウイルストキソプラズマHIVヘルペスウイルス肝炎ウイルス薬剤過敏風疹急性感染症性リンパ球増多症リンパ腫白血病などを挙げています。

軽度の肝機能異常(95%以上)と異型リンパ球上昇(通常10%以上)が特徴で、アルカリフォスファターゼやビリルビンの上昇を認めることもあります。通常白血球は上昇しますが、上昇していなくても否定は出来ません。教科書的には、診断する際にPaul-Bunnel反応が用いられますが、日本人の陽性率が低く診断に寄与しないと言われています。EBV-VCA-IgM抗体は初感染時にしか認められないので、これが検出出来れば初感染と言えますが、発症して病院を訪れた時には既に測定限界以下に低下していることが多いです。VCA-IgG抗体はIgM抗体に少し遅れて上昇が始まり、その後ゆっくりと低下しますが、EBV既感染者では生涯検出可能なレベルにとどまります。EBNA抗体は症状が沈静化したころから上昇する抗体で、既感染者では生涯検出可能なレベルで存在し続けます。よって、初感染パターンは①EBV-VCA-IgM陽性、②EBV-VCA-IgG抗体陽性でありながらEBNA抗体陰性の2つです。

治療は安静と対症療法が基本。ABPCを投与すると、黄斑性皮疹、結節性紅斑、多形紅斑などがほぼ100%(セフェムでも約15%)出現するので、溶連菌との合併を考えるときはマクロライド系を使用します(ただし、アジスロマイシンでも皮疹の報告あり)。脾腫がある場合は、脾破裂を防ぐために最初の一カ月は運動を控えるように指導する必要があります。ちなみに、「伝染性なんて病名についていますが、よっぽど濃厚な接触がない限りうつりません。」と伝えておくのを忘れないようにしましょう。

書き出したら長くなっちゃいました(これなら教科書読んでいるのと変わらないじゃん・・・ごもっともです、ハイ)。でも、総合診療に限らず、通常の外来や時間外外来などで、“ワンランク上の診察”をするために、絶対押さえておきたい病気です。チェックしておいて下さい。

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