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自律神経失調症?〜その4〜

定義医療面接除外診断ときて、最後は治療です。身も蓋もありませんが、いわゆる『自律神経失調症』に対する確立された治療法はありません。Murphyによって提唱された『身体化障害』のプライマリ・ケア医による治療計画の柱は、①一貫した治療関係、②不必要で侵襲的な医療を防ぐ、③ストレスの領域に関して支持的に傾聴する「ストレスが原因である」と言及しない)、です。また、基本的な目標は、『原因を完全に解明することや徹底的な治癒ではなく、症状への対応とその援助を行うこと』とも述べられています。またSmith、MonsonとRayは、『身体化障害の患者に対するプライマリ・ケア医への手紙』の中で①定期的な外来受診(4~6週に1回)、②受診ごとに行う身体診察、③明らかに必要ない検査・治療・入院を避けるためのアドバイス、④患者に「それは気のせいですよ」と告げることを避ける、という4項目の治療を体系化しています。これはそのまま『自律神経失調症』に使っても差し支えないように思えます。やや抽象的な感は否めませんが、敵は抽象の塊のような『いわゆる自律神経失調症』ですから・・・。

具体的な治療ですが、薬物療法と薬物療法以外に分けることができます。

1)薬物療法以外

①十分な睡眠、適切な食事

緊張感の多い生活は自律神経への負担が大きく、生活環境を見直すことも重要なことになります。また、適切な食事により自律神経に十分な栄養を与える必要があります。

②自律神経の耐性を高める治療

代表的なものは自律訓練法ですが、認知療法や行動療法が有効な場合があります。詳しくは成書を参照して下さい。

2)薬物療法

①対症療法

プライマリ・ケアの現場でまず行われているはずです。便秘には緩下剤を、胃部不快には整腸剤を、頻脈性の動悸にはβ-blockerを使います。

②漢方薬

多様な症状が現れる自律神経失調症の治療は、漢方薬が大活躍します。以前困ったときに“漢方”はいかがで書きましたが、漢方医学では患者様の状態を『証』として表現します。自律神経失調症は気や血などに問題が生じて、気虚(気が全体的に不足している状態)、気うつ(気の流れが障害された状態)、お血(血行不良)、血虚(血液が全体的に不足している状態)になったときに起きると考えられています。そのため、気や血の状態を整える「気剤」や「駆お血剤」などの漢方薬を使って、症状をとりのぞいていきます。自律神経失調症で使われる代表的な漢方薬は以下のとおりです。

・実証:柴胡加竜骨牡蛎湯・大承気湯・女神散など

・虚証:香蘇散・加味帰脾湯・柴胡桂枝乾姜湯など

また、更年期障害でよく処方される当帰芍薬散(めまい、冷え、倦怠感)、加味逍遙散(不定愁訴、不安・イライラ、不眠)なども有効性が報告されています。

③自律神経への負担を軽減させるための治療

自律神経の中枢が視床下部にあるのはご存知の通りですが、ここは情動の中枢である辺縁系と相互連絡しています。このため、抗不安薬で辺縁系の活動を抑えることで、自律神経の興奮も抑えられると考えられます。また辺縁系と大脳皮質との連絡もあるわけですから、抗うつ薬が有効となる場合もあります。

④自律神経の中枢に直接働く薬

Tofisopam(グランダキシン)、γ-oxyzanolなどは視床下部に直接作用し、自律神経の働きを調節します(実際に劇的な効果が表れることは少ない印象があります)。

実際、ER、あるいはプライマリ・ケアの現場でこのような患者様は、とかく厄介者扱いされてしまうことが多いと思いますし、忙しい臨床の現場でそれはある意味仕方がないことなのかもしれません。ただ、それはあくまでも医者側の言い訳です。我々の不勉強を患者様の不利益に結び付けてはいけません。もし貴方が「こんなの自律神経失調症だろ」と思ったら、ちょっと頭の中を冷静にしてみて、こんな風に説明してみてはどうでしょうか。
『あなたの病名は「身体化障害」が最も疑われます。世間で「いわゆる自律神経失調症」と呼ばれているものです。これまで「心の問題」などと言われ、苦しい思いをされたこともあったでしょうが、これは心の病気ではなく立派な病気です。ただ、何か大きな病気が紛れている可能性もありますので、必要最低限の検査を行います。それらの検査で大きな問題がないなら、改めてこの病気に対して治療をしていきましょう。まずは十分な睡眠とバランスのいい食事をとって下さい。今困っていらっしゃる症状に対しては、それぞれお薬で対応させていただきます。不安やイライラに対するお薬を使わせていただくかもしれませんが、それは、脳の中で自律神経をコントロールする場所が、不安や怒りといった気持ちをコントロールする場所と連絡しているからですのでご了承下さい。また、今出ている症状が何か新たな病気のサインである可能性もあるので注意が必要です。今後私が経過を診させていただきますので、安心して下さいね。』

最後に、以下の項目をチェック!これは、患者様にではなく、診察している貴方に対してのチェック項目です(-^〇^-)

その1:訴えの中心となる5つの症状は、『自律神経の失調症状』で説明が出来ますか?
その2:その症状は『うつ病』、『心気症』、『慢性疲労症候群』では説明出来ませんか?
その3:4つの疼痛、2つの消化器症状、1つの性器症状、1つの偽神経症状はありますか?
その4:患者さんを“不必要な検査漬け”にしていませんか?
その5:目の前の患者さんに対して「こんなの気持ちの問題だろ」って思っていませんか?

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