Home > ブログ > その下痢の原因・・・貴方?

その下痢の原因・・・貴方?

敗血症で入院された患者様。「どこがフォーカスだ?!」「起因菌は何だ?!」「この抗菌薬の投与量でいけるか?!」など一生懸命頭を捻って、やっと治療への反応が出てきて患者様の状態が良くなって「やれやれ(^.^)」っと思った矢崎に・・・あいつがやって来ます。そう、あいつです。クロストリジウム・ディフィシルによる偽膜性腸炎です

 

クロストリジウム属(Clostridium)は、偏性嫌気性で芽胞を形成するグラム陽性桿菌です。この属名は、ギリシャ語のkloth(捻じれ)から派生したklostridion (小さく捻じれたもの)から来ており、ラテン語化するとClostridium となるそうです。ボツリヌス菌(C. botulinum)、破傷風菌(C. tetani)、ウェルシュ菌(C. perfringens)など臨床的に問題となる菌は多いですが、圧倒的に頻度が高いのは、今回の主役であるクロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)です。

 

C. difficileの“difficile”は、この菌が酵素に弱いため培養が“difficult(困難) ”であることに由来しています(意外に単純(^^ゞ)。健康人のなかにもC.difficile の保菌者も少数存在し、特に高齢者は10%程度が保菌していると言われています。ペニシリン系、セファロスポリン系、フルオロキノロン系などの抗菌薬投与で消化管内の多くの常在菌が死滅すると、菌交代現象としてC.difficile が増殖し、その結果、毒素が多量に産生され、腸炎や偽膜性大腸炎を発症します。診断は毒素の同定、もしくはS状結腸鏡/大腸内視鏡で確定されます。毒素検査は感度70~95%、特異度95~99%(LR+14~95、LR-0.05~0.32)とまずまずですが、感度の低さから2~3検体の提出が推奨されています。また、臨床症状が典型的ならば、検査の結果に関わらず治療を行うことは許容されます。治療は最近メトロニダゾール(500)3T/3×N/10日間が流行り(?)ですが、メトロニダゾール耐性菌も増えてきたため、難治例や重症例には最初からバンコマイシン(125)4T/4×N/10日間を投与しましょう

 

感染と保菌に関しては、2011年のNEJMで興味深い報告がありました。カナダの6つの病院で4143例に対するC. difficile感染症患者(117例)と保菌者(123例)の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究です。感染症患者は「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と、保菌者は「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」と有意な関連を示したと報告しています。

 

この報告はもちろん重要ですが、最も注意すべき点は『抗菌薬関連下痢=C.difficile抗原陽性』ではないということです。抗菌薬が原因となる下痢のうちC.difficile関連のものは全体の20%程度ですので、「抗原陰性だからもうちょい抗菌薬続けてみるか」はちょっと待ったです。やっぱり止められる抗菌薬は止めましょうね)^o^(

 

 

 

Loo VG et al. Host and pathogen factors for Clostridium difficile infection and colonization. N Engl J Med. 2011 Nov 3;365(18):1693-703.

Home > ブログ > その下痢の原因・・・貴方?

メタ情報

Return to page top