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『腰が痛い!』の落とし穴

当科では、毎週木曜日の午後4時から、兄弟科である総合救急内科と合同のカンファランスを行っています。このカンファは勉強になりますよ~。何といっても、当院総合診療の二枚看板である山中先生と植西先生のレクチャーを受けることが出来ます。興味のある方は是非参加して下さい(^-^)。

 

さて、本日は総合救急内科の岩田先生からの症例提示がありました。70歳代男性で主訴は比較的急性発症の腰痛。悪心なども伴っていて、どういう経緯か他院から『大腸穿孔疑い』で紹介され、胸部CTで縦隔炎を認めたため、「食道穿孔か?!」となり、最終的には脊椎炎から縦隔への炎症波及・・・怖いですね(・_・;)。この症例の病歴を振り返って、“腰痛のRed Flag Sign”を探してみよう、という非常に教育的なものでした。腰痛は60歳以上の約30%が経験し、厚生労働省が1986年から発表している統計では、肩こりと並んで常にトップを争うcommon diseaseの代表です。当たり前すぎて兎角流されがちですが、忘れた頃にやってくる『危険な腰背部痛』をしっかり押さえておきたいところです。以下に腰痛を主訴にすることがある、『ERで見落とし厳禁』の疾患を挙げます。

 

<内臓疾患>

  • ž急性:心筋梗塞・狭心症、感染性心内膜炎、大動脈解離 腹部大動脈瘤破裂、肺塞栓(肺梗塞)、胸膜炎、膿胸、急性肝炎 胆嚢炎 総胆管結石 胆石症、胃・十二指腸潰瘍穿孔、腸閉塞、腎・尿路結石 腎梗塞 膀胱炎 腎盂腎炎、子宮付属器炎 精巣茎捻転
  • 慢性:腹部大動脈瘤

<神経筋疾患>

  • ž急性:脊髄内出血(主にクモ膜下出血による)、硬膜外出血、脊髄動脈閉塞、硬膜外膿瘍、脊髄炎、帯状庖疹 ギラン・バレー症候群
  • ž慢性:転移性腫瘍、脊髄炎、多発神経炎(糖尿病,アルコールビタミン欠乏)

<脊椎疾患>

  • ž急性:感染性関節炎、化膿性脊椎炎、椎体圧迫骨折
  • ž慢性:多発性骨髄腫、強直性脊椎炎

 

絞りに絞ってもこれだけ挙がります。でも、救急外来の現場では鑑別疾患を挙げすぎることにより、返って診断の迷路に迷い込んでしまうことがあります。そこで、腰背部痛を来たす頻度を考慮した上で、緊急性の高い腰背部痛を大まかに『感染症』『血管系』『癌』に絞ってアプローチすることをお勧めします。この3つのカテゴリーに含まれる疾患を限られた時間、限られた病歴、限られた検査所見を使って拾い上げるために、以下に示す“腰痛のRed Flag Sign”を是非押さえておいて下さい。

 

<腰痛のRed Flag Sign>

  • ž共通: 夜間の安静時痛(睡眠を妨げるほどの痛み)、4週間以上持続する痛み、バイタルサインの異常、馬尾神経圧迫症状(肛門周囲の知覚低下・肛門括約筋弛緩、排尿障害、下肢の酷い神経症状)
  • ž感染症: 発熱、悪寒・戦慄、皮膚感染、尿路感染、静注濫用、易感染状態(ステロイド内服中、コントロール不良糖尿病など)、脊椎叩打痛、結核の既往、骨髄炎の既往
  • 血管系: 誘引のない突然の痛み、安静時痛、痛みの移動、高血圧の既往、脈拍の左右差、深部静脈血栓症の既往、突然の呼吸困難、高齢発症の尿路結石様症状(特に血尿)
  • ž : 50歳以上、癌の既往、説明のつかない体重減少、原因不明の貧血

*骨転移しやすい癌は肺癌、乳癌、甲状腺癌、腎癌、前立腺癌の左右対称な臓器+造血器疾患と覚える(胃癌、大腸癌、膵癌、肝癌などの消化器癌は比較的少ない)

 

個人的には、『急性腰痛に対してはRed Flag Signの確認を、慢性腰痛に対しては腹部大動脈瘤の否定を』が、正しいアプローチなんじゃないかと思います。

書いているうちにその大切さが、さらに身に染みてきました(^^)/。また別の機会に、腰痛患者様の押さえておきたい診察ポイントや、プライマリケアの現場でよく出会う腰痛疾患なんかについて書いてみたいと思います。

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