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第二のメタボ? “chronic systemic inflammatory syndrome”

COPDの勉強会に行ってきました。最近は「COPDも生活習慣病の一つと考えよう」なんて流れもありますしね。実際、2011年のLancetで『COPDの生涯リスクはうっ血性心不全、心筋梗塞、乳がん、前立腺癌より高い』なんて報告もされています(Lancet 2011; 378: 991–996)。医師の診断したCOPD:579466例に対する解析で、発症頻度:5.9例/年/1000人、生涯リスクは男性:29.7%、女性:25.6%、そのリスクはうっ血性心不全の2倍程度(男性16.6%、 女性4.6%)、急性心筋梗塞の2倍以上(男性で10.7%、女性:4.46%)、女性の乳がん生涯リスクの3倍以上(7.6%)、男性の前立腺癌生涯リスクの3倍以上(9.3%)・・・ってまあ、ちょっと乱暴な比較の気もしますが(^_^;)。とにかく、COPDはトピックな訳です。

 

さて、今回の勉強会では、頻繁に慢性全身性炎症症候群(chronic systemic inflammatory syndrome;以下CSIS)という概念が登場しました。これも2007年頃にLancetで扱われ始めた概念です(The Lancet 2007; 370:797-799)。従来の『慢性の非可逆性の気流制限』という病態に加えて、『タバコなどの有毒粒子やガスによる肺への異常炎症反応』という病態概念も随分定着してきました。それに加えて、以下のような理由でCSISという概念が提唱されています。

 

□喫煙、吸入毒性物質はCOPDだけでなく、心血管疾患、メタボリックシンドロームにも関与している。

□COPDは高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、肺感染症、がん、肺血管疾患の合併症が多く、死亡原因との因果関係も大きい。

□COPD患者の20%以上が慢性心不全、50%以上にメタボリックシンドローム、20-30%に糖尿病、20-30%に貧血を合併し、その他、肺高血圧、冠動脈疾患・PADなどの合併もある。

□2型糖尿病は70%で高血圧とリンクしており、80%以上で肥満を有するが、糖尿病は、肺機能低下と独立して相関があり、肥満はさらにCOPD重症度を増加させる。

□50歳以上の約50%に、COPDを含む少なくとも3つの慢性疾患があり、約20%に、5つ以上の慢性疾患を有する。

 

これらの理由で、『COPDは肺のみで判断せず、CSISとして考える必要がある』、としています。そのうえで、「メタボリックシンドロームのように、色々なリスク因子を包括的にアプローチすることが、有益な効果をもたらす」としています。う~ん、何か丸めこまれている気が・・・。メタボリックシンドロームが出てきた時と似てるんだよなぁ(~_~;) ただ、米国の胸部疾患学会でも『COPDは肺および全身の炎症と関連する。後者は無数の肺外疾患に影響を与える( “systemic effects of COPD”)。』とし、ステロイド治療は、安定したCOPD患者様の全身性炎症マーカーを減少させると報告しています(The Proceedings of the American Thoracic Society 4:522-525 (2007))。つまり、「COPDの治療を行えば、その他の生活習慣病の発症や進行を抑制できる」ということになりますが・・・COPDの患者様に高血圧や糖尿病などの合併が多いのは事実ですし、それら背景因子による急性増悪が死亡原因になり得ますので治療が必要なのは間違いありませんが、「COPDの症状はまだ出てきていないけど、その他のリスクを減らすためにステロイド吸入してもらおう」なんて結論は、まだ極論かもしれません。

 

まだまだエビデンスの蓄積途上のような感がありますが、少なくともプライマリケアの現場では、高血圧や糖尿病、脂質異常症などと同じように、COPDにアンテナをはってなければいけなくなることは確かです。ただ、スパイロメトリーがすぐに出来る環境でない限り、血圧や糖尿病のようなクリアカットな診断が難しいところが悩みの種です。『ロングアクティブなβ2刺激薬+ステロイド(アドエアRなど)と抗コリン薬(スピリーバRなど)を試しに使って、症状が改善したら、その他の全身性の炎症に起因する疾患の管理も考慮してステロイド吸入を継続』といったところが、現実的な対応だと思います。

 

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