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「ん?がん?」-検診の意味って?-

今週の合同カンファランスはERが忙しくて中止になりました。でも、タダでは終わらせません(^◇^) 緊急レクチャーをさせていただきました。今回のテーマは『癌を疑う時って?』です。
救急外来が中心の研修医の先生方はなかなか気付かないかもしれませんが、一般外来には非常に沢山の検診異常の患者様がみえます。多くの場合、「大丈夫ですから、これからも定期的に検診を受けて下さいね」で終わるんですが、中にはどう判断すればいいか悩むことも多々あります。特に困るのは『便潜血陽性』です。便潜血陽性の大半は痔核が原因で、ポリープからの出血が約30%、大腸癌は約3%程度です。憩室があっても便潜血は陽性になります。随伴症状がなくて、単に便潜血が陽性といった場合、大腸癌である可能性はかなり低いハズです。さらに言えば、便潜血2回法ですら、進行癌の約80~90%、早期癌の約50%程度しか拾い上げられないのです。「便潜血陽性なんて当てにならない」と思って当然です。じゃあ、「貴方は絶対大腸癌じゃないから大丈夫です」と言えるかと言うと、訴訟社会の昨今、口が裂けても言えません。じゃあ、『便潜血陽性』にすべて大腸内視鏡を行うかというと、それもナンセンスです。しかも、大腸内視鏡受ければ安心かというと、そうとも言い切れません。米国で報告された癌検診における大腸内視鏡のエビデンスレベルは1~5段階の5(臨床経験や記述、あるいは専門委員会のレポートに基づいた権威者の意見)であるばかりか、『検査としての意義は高いが、穿孔や出血などの検査に伴う合併症に対しての評価が十分されていない 』といった注意書きも書かれています。むしろ、エビデンスレベルとしては便潜血反応の方が高く(1;無作為抽出比較試験)、50歳以上は毎年1回受けることを推奨しています。・・・うぅん、大混乱(+o+)!

 

さらに混乱する話をすると、検診には様々な“バイアス”がかかります。代表的なものは以下の通りです。

 

  • 患者選択バイアス(selection bias)

当該疾患の代表的患者群でないために結果に歪みを生ずること。癌検診を受ける方は、健康への意識が高かったり、「もしかしたら癌かも」と思って受けられる方も多いんです。

  • žリードタイムバイアス(lead time bias)

特に何も症状がない、より早期に病気が見つかることにより、あたかも寿命が延長したかのようにみえることがあります。

  • ž期間バイアス(length bias)

進行がゆっくりした疾患の方が、早い疾患より頻回に検診スクリーニングにかかることになるため、より高頻度に発見されることになります。

  • žOver diagnosis (over treatment)

予後に影響しない、本来なら見つける必要のない疾患までも見つけてしまうことです。前立腺癌のような進行の遅い癌などでみられます。

 

益々混乱してしまいました(*_*; だからって、「もう検診の結果なんて当てにしない!」なんて訳にもいきません。実際、検診結果で早期癌が発見され、救われている患者様も大勢いるんです。じゃあ、どうするか。以下に示す『癌によくみられる症候』に対して、それぞれのリスク因子を拾い上げるためのアンテナを張りましょう

 

  • ž 下血・血便

約3%に大腸癌。45歳以上、大腸がん家系。貧血/体重減少

  • ž血尿

肉眼的血尿の男性約10%、女性の約3%に腎尿路系のがん(顕微鏡的血尿なら約1%)。化学物質曝露歴(例:ベンゼン)、45歳以上、大量喫煙。

  •  嚥下困難

男性約6%、女性の約3%に食道がん。バレット食道炎の既往/喫煙/飲酒/45歳以上。

  • ž 喀血・血痰

喫煙/高齢/アスベストの曝露。体重減少/骨痛/新たな腰痛/ばち状指。

  • ž不明熱

約15%が癌、リンパ腫、造血器腫瘍(悪性リンパ腫、白血病・造血器系腫瘍、腎癌、肝癌)・体重減少/倦怠感/寝汗/骨痛/黄疸/出血傾向。

  • リンパ節腫脹

リンパ節サイズ大/増大傾向/リンパ節が硬い/周囲組織との癒着/鎖骨上リンパ節が腫大/体重減少/寝汗/掻痒感/耳鼻咽喉科領域の症状(嗄声・嚥下困難)

  • ž寝汗

起床時に下着を着替えるほどのもの。約25%がリンパ腫・白血病・腎がん・前立腺がん。体重減少/食欲低下/リンパ節腫脹/皮膚の掻痒/骨痛/新たな腰痛。

  • ž体重減少

意図しない体重減少の約16~36%はがんの可能性。喫煙/大量飲酒/がんの家族歴。消化器症状(嚥下困難・血便・タール便)/リンパ節腫脹/倦怠感/易疲労感/骨痛/新たな腰痛。

  • ž腰痛

約0.7%が転移がん・骨髄腫。乳がん、前立腺、腎臓、メラノーマ、その他大腸がんなどの既往。安静時に増悪/全身症状(体重減少、発熱、倦怠感)/1ヵ月以上継続。

  • 乳房のしこり

乳がんの家族歴。硬い腫瘤/皮膚潰瘍/血性分泌/腋窩リンパ節腫脹。

  • 異常性器出血

閉経後異常性器出血の約5%は子宮内膜がん・子宮頚がん・卵巣がん。卵巣がんの家族歴/子宮がんスクリーニング未受診。体重減少/下腹部の腹囲増大(腹水)/鼠径リンパ節腫脹

 

研修中は「化学療法だ!」「手術だ!」と、兎角派手な医療行為に気持ちが流されがちです。でも、本当に大切なのは『早期発見、早期治療』であることは間違いありません。我々の「ま、大丈夫だろ」という根拠のない感覚で、患者様が不利益を被るのは御法度です。『たかが検診、されど検診』ですよ(^-^)

 

*Hematology and Oncology.Cancer Screening;MKSAP 14: 2006 American College of Physicians;P57-62.

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