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「病を愛しんで、人を憎まず」

ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョップリン、ポール・コゾフ、キース・ムーン、シド・ピシャス、マイク・ブルームフィールド、フィル・ライノット、ジョニー・サンダース、尾崎豊、ザ・レヴ・・・これ、全て“drug overdose”で亡くなったロックミュージシャンです。特に60年代~70年代にかけてのロックミュージシャンの若年死亡の原因の多くが、アルコールや麻薬の過剰摂取によるものと推測されています。エリック・クラプトンやミック・ジャガーなど、へヴィなドラッグ中毒者であったにも関らず今でも現役で頑張っているミュージシャンがいることを考えると、彼らが生きていたらどんな音楽を残してくれたか・・・でも、そこが彼らを伝説にした所以なのかもしれませんが。

 

前置きはこれぐらいにして、今回は『薬物大量内服』を扱います。今の時代の日本で麻薬の過剰摂取にはなかなかお目にかからない(かかりたくないです(*_*;)ですが、医者の処方した薬剤によるODは、むしろ増えてきています。林寛之先生の『Step Beyond Resident』を中心にまとめてみました。

 

  • まずは救急隊に「左側臥位で搬送して下さい!」(十二指腸にいかないように)
  • 考える順番:胃洗浄→活性炭→下剤→腸洗浄→透析→拮抗薬(あくまで考える順番)
  • 胃洗浄は「今はやらない!」と覚えておいたほうが無難。生命の危険を及ぼす中毒で、服薬1時間以内なら・・・“考慮する”だけ生命予後は『胃洗浄+活性炭<活性炭のみ』。特にアルカリ、酸、灯油、ガソリンは禁忌!〔意識障害で誤嚥(化学性肺炎)の恐れ〕
  • 活性炭は原因不明の中毒の第一選択。1g/kg(理論的には内服薬物の10倍量)を、できれば1時間以内に投与。意識があるうちは普通に飲んでもらおう(無理矢理経管で投与する必要なし)。効く、効かないはとりあえずおいといて、とりあえず禁忌はなし(アルコール、酸、アルカリ、灯油、ガソリン、重金属には無効)。1時間以上経っていると効果は疑問だが、腸蠕動を遅らせる薬(精神科の薬など)や徐放製剤の場合には遅れても考慮する必要あり。

 

☆活性炭の頻回投与(25gを2~4時間毎)のABCD

A:Aminophylline(テオフィリン),Anti-(キニン),Aspirin(アスピリン)

B:Barbiturates(フェノバール),β-blocker

C:Carbamazepine

D:Dilantin(アレビアチン)

 

  • 下剤(マグネシウム製剤など)の効果発現部位は大腸。でも薬剤吸収部位は胃・十二指腸・・・効くの?!⇒活性炭で便秘になるのを防ぐため(ODに下剤だけ使っても全く意味ナシ!
  • 腸洗浄はあまり意味なし。全く打つ手が無い時に苦し紛れに選択される程度。
  • 血液透析は蛋白結合能が低く、体内分布が少なく、水溶性、分子量の小さいものに考慮(I STUMBLE(私はつまずく);Isopropranol/Salicylate/Theophylline/Uremia/Methanol/Barbiturates,β-blocker/Lithium/Ethylene glycol)
  •  拮抗薬にはあまり頼らない。アセトアミノフェンにNアセチルシステイン、三環系抗うつ薬にメイロン、有機リンにアトロピンやPAM、アトロピンにフェゾスチグミンなど。

 

あと、原因の分からない時の診察のポイントも載せておきますね。

 

<臭い>

アーモンド臭:青酸/フルーツ臭:糖尿病性ケトアシドーシス、イソプロプラノール/ニンニク臭:砒素、有機リン/モスポール:樟脳/梨臭:抱水クロラール/腐卵臭:二酸化イオウ、硫化水素

 

<身体所見>

・縮瞳:コリン作動薬有機リン、フェノチアジン、ピロカルピン、鎮静薬、催眠薬

・散瞳:抗ヒスタミン薬、抗うつ薬抗コリン薬、交感神経賦活剤

ž・交感神経刺激:血圧↑、脈拍↑、体温↑、中枢神経症状(興奮、昏睡)、散瞳、発汗↑

覚醒剤コカイン、PCP(垂直性や回転性の眼振)、LSDなど

ž・副交感神経遮断:あれ?交感神経刺激?・・・でも発汗↓(カラッカラに乾燥!

抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬

・副交感神経刺激:血圧↓、脈拍↓、体温↓、中枢神経症状(不穏、昏睡)、縮瞳、分泌液↑(実はこれが死因)、消化管運動↑、発汗↑(交感神経だけどAch作動性)

有機リン、サリン、ソマン、VXなど(皮膚吸収強く、診察時注意!)

治療は硫酸アトロピンとPAM(2gをiv)

 

<アニオンギャップ>

ž   メタノール、パラアルデヒド(現在は使用されていない)、イソニアジド、エチレングリコール、サリチル酸などでAG増大型の代謝性アシドーシスになる。

 

以前の救急外来では、「今後同じことをしないように敢えて胃洗浄!」なんて考え方が、当たり前のように行われていたようですが・・・何様なんでしょうか(-“-)。その方々がODしてしまったのは、症状の一つですからね。「病を愛しんで、人を憎まず」です(^-^)b(もちろん、ODという行為を擁護している訳ではありませんので悪しからず)

 

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