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「何か喉にボールが・・・」

一般外来をしていて、「喉のところに何かひっかかっている感じがするんです」という訴えによく出会います。中には色々な病院で検査をしても分からなくて、「もしかしたら癌なのに、先生が隠しているんじゃ・・・」なんて強い不安をかかえて受診される方もいらっしゃいます。もちろん隠すことなんてないんですが、恐らくその際に十分な説明がされていなかったんじゃないか、という場合も多くみられます。そんな不安を色々なところで訴え続けることにより『医原性不安障害』(←管理人の造語です)になってしまう訳です。

 

改めて言うのも何ですが、「喉に違和感がある」という訴えで最初にするべきは、器質的疾患の否定です。特に多い疾患は副鼻腔炎(後鼻漏)と逆流性食道炎ですが、それ以外に咽喉頭の悪性腫瘍・良性腫瘍、甲状腺癌、食道癌胃癌、食道静脈瘤、アカラシア、マロリー・ワイス症候群、食道憩室などの局所病変、舌根扁桃肥大、過長茎状突起、茎突舌骨靭帯の化骨、口蓋垂の過長、唾液分泌異常などの形態異常などの否定が必要です。また、内科医ならば甲状腺機能異常、アレルギー性咽喉頭炎、鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson症候群)、悪性貧血(Hunter舌炎)、強皮症糖尿病、重症筋無力症の確認も必要でしょう。

 

これらの疾患を否定して初めて『咽喉頭異常感症』という病名を思い出して下さい。心療内科では『ヒステリー球』、東洋医学では気滞による『梅核気(ばいかくき)』と呼ばれるものです。既に2500年前にヒポクラテスも指摘・・・て、相変わらず信じられないくらいの『医聖』ぶりY(>_<、)Y!!!この疾患、日本で紹介されたのは19世紀末のことで、当初は舌根扁桃肥大が原因と考えられていました。1950年頃には、既に「咽喉頭に異常感を訴えるが、通常の耳鼻咽喉科的視診によっては、訴えに見合うような器質的病変を局所に認めないもの」という定義が謳われていますが、60年以上たった現在でも非専門医の中ではあまり知名度が高くありません(外来受診患者の5‐10%に診られるにも関わらずです)。喉頭の筋肉の痙攣、女性ホルモンの異常、交感神経の緊張などの病態が予測されていますが、残念ながらまだ原因不明です。ただ、少なくとも言えるのは、『咽喉頭異常感症』の患者様の多くに、不安、過緊張、転換性障害、うつ状態といった背景因子が存在するということです。治療は以下の通りです。

 

・不安障害がメイン:アルプラゾラム(ソラナックス)穏やかな抗不安作用で安全性高い

            クロナゼパム(リボトリール)身体症状が強い時

・うつ状態がメイン:パロキセチン(パキシル)、エスシタロプラム(レクサプロ)など

・漢方薬:『気滞』に対して半夏厚朴湯、柴朴湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など

 

「どれだけ咳払いしても喉の違和感がとれなくて・・・」なんて患者様の言葉で、不安障害やうつ病を発見することは確かにあります。ただ、以前心身相関の項で書かせていただいた通り、非専門医である我々の役割は「まずは身体疾患有りき」のスタイルで望むことです。絶対にしてはいけないことは「『医原性不安障害』を作らないこと」って、クドいですかね(^^ゞ

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