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血培からカンジダ!・・・で、どうする?

「敗血症を疑えば血培!」「意識障害なら血培!」「訳が分からなければ血培!」などなど、当科ではガンガン血液培養を行っているのですが、時々カンジダ属が検出されることがあります。もちろんICUセッティングならば躊躇せずに治療ですが、比較的お元気な方から検出されることもあり、「訳が分からないからとりあえず血培とったら、カンジダが出てきてさらに訳が分からなくなって」なんてことも(←ダメなアプローチの典型です(-_-;))

 

カンジダ属が真菌の中で最も検出頻度が高いことは御存じだと思いますが、実は血流感染の原因の中でも4番目という、敗血症診療の中でも重要な微生物の一つです。臨床的に問題になる菌と分離頻度は以下の通りです。

 

  • ž   Candida albicans:40~60%
  • ž   Candida glabrata:20~30%
  • ž   Candida tropicalis:20~30%
  • ž   Candida paraposilosis:10~20%
  • ž   Candida krusei:5~10%
  • ž   Candida lusitaniae:0~5%

 

一般的にC.albicans以外のカンジダ属をnon-albicansカンジダ属といいますが、個人的にこの分類はあまり意味がないような気がします。むしろ、フルコナゾール(ジフルカンR)への感受性の低いC.glabrataと、耐性を持つC.kruseiを、その他のカンジダ属と分けて考える方が現実的でしょう(このため、重症例でフルコナゾールをファーストチョイスにするのは止めた方が無難です)。

 

次に、危険因子のチェック。これは絶対暗記です!

 

  • ž   重症患者(特にICU在室7日以上)
  • ž   APACHE Ⅱ score≧20
  • ž   好中球減少、血液悪性腫瘍
  • ž   中心静脈カテーテル留置
  • ž   広域スペクトラム抗菌薬使用歴
  • ž   ステロイド使用者
  • ž   H2-ブロッカー長期使用
  • ž   腎不全・血液透析・持続血液濾過透析
  • ž   急性膵炎
  • ž   外傷、および広範囲熱傷
  • ž   消化管穿孔・腹部手術・術後消化管縫合不全
  • ž   移植レシピエント
  • ž   過去のカンジダ定着

 

カンジダ属へのアプローチの大前提として『血液培養からカンジダ属が検出されたら、全身状態がどうであろうと必ず(しかもすぐさま)治療!』です。カンジダ血症の致死率は40~50%と極めて高く、かつ放置すれば眼内炎、感染性心内膜炎、化膿性血栓性静脈炎、骨髄炎、髄膜炎といった重篤な転移性病巣を作ってしまいます治療開始前にこれら臓器の精査を忘れずに!)。一般的な血培の報告期間(約2日)治療開始を待つだけで、死亡率が20%も増加すると報告されていますので、治療開始の遅れは許されません1)。ただ、「だから『可能性があれば全例治療!』とすることに関してのコンセンサスはまだ得られていません。「複数定着菌」×1点+「手術後」×1点+「重症敗血症」×2点+「高カロリー輸液」×1点の4つのリスク因子の合計得点に対してカットオフ値を2.5とした場合でのカンジダ感染症に対する感度 81%、特異度74%と報告されていますが2)、これだけで治療開始の決めてになるかというと微妙です(~_~;)

 

治療薬の選択はなかなか難しく、詳細はカンジダ症治療の実践的臨床ガイドラインなどを参照して下さい。ただ①従来のファーストチョイスであるアンホテリシンBは安価でエビデンスも豊富ですが、副作用が多くあまり選択されなくなっている、②現在はフルコナゾールがファーストチョイスだが、全身状態が悪い時は低感受性のC.glabrataと、耐性をもつC.kruseiを考えてキャンディ系のミカファンギン、③ミカファンギンは髄液、眼内、尿路への移行はイマイチで、治療エビデンスも不十分、といったところは、最低限覚えておきましょう。治療期間は感染部位により違いますが、基本は『血液培養陰性化から2週間』です(『“CRP”や“β-Dグルカン”の陰性化』じゃないですよ!)。

 

最後にβ-Dグルカンの解釈について。検査法によりバラバラですが、国内で使用頻度の高い『改良MK法』は、カットオフ値を20.0pg/mLとした場合の感度75.0%、特異度91.6%、『ワコー法』ではカットオフ値を7pg/mLとした場合の感度63.0%、特異度96.0%と報告しています。「結構凄いじゃん!」と思ってしまいそうな数値ですが、①良好な結果の得られたスタディの多くが血液悪性腫瘍領域のもの、②重症度や治療効果を反映しない、③血液透析、免疫グロブリン使用、ガーゼの使用、カンジダの定着などでは偽陽性を示すなど、解釈にはかなり注意が必要です。前述しましたが、「β-Dグルカンも陰性化したし、治療止めよっと」なんて考え方は御法度です!

 

感染症の多くは「何となく治療しても何となく治ってしまう」ものです。「何となく熱があるから抗菌薬を出したら治った(←たぶん最初から抗菌薬が必要なかった)」、「何となく重症だから広域抗菌薬を投与した(←たまたま当たったんでしょうね)」・・・こういった『間違った成功体験』は、耐性菌の助長などこれはこれで大きな問題ですが、患者様が助かれば、最低限OKでしょう。しかし、カンジダ感染症に関しては「何となくの治療」は様々な合併症を引き起こすばかりか、最悪の経過をとることもしばしばです。非専門医でも最低限のところは押さえておきたいところです。

 

1)    Garey KW, Rege M, Pai MP et al: Time to initiation of fluconazole therapy impacts mortality in patients with candidemia: a multi-institutional study. Clin Infect Dis 43: 25-31, 2006.

2)    Leon C, et al: A bedside scoring system(“Candida score”)for early antifungal treatment in nonneutropenic critically ill patients with Candida colonization. Crit Care med. 2006 Mar; 34(3): 730-7.

 

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