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奥ゆかしき大和撫子・・・でも(>_<)!

日本の女性は奥ゆかしく我慢強く、それが美徳と言われますが、こと心筋梗塞に関しては我慢しないでね、というお話。女性の心筋梗塞は、男性より発症頻度は低いものの、いざ発症した場合の死亡率が高いと報告されています。その理由が“女性の心筋梗塞は胸痛が少ない”ことと、前述の“日本人女性は我慢強い”なんです。

 

実際、女性の心筋梗塞で胸痛を来たさない割合はどれくらいでしょう。これに関しては、アメリカのフロリダ州Watson Clinic and Lakeland Regional Medical Centerで、心筋梗塞で入院した1,143,513人(男性661,932人、女性481,581人)について検討した大規模なスタディが参考になります(Canto JG et al. Association of age and sex with myocardial infarction symptom presentation and in-hospital mortality. JAMA. 2012 Feb 22;307(8):813-22.)。

 

このスタディ全体での心筋梗塞患者の内、胸痛を来たさなかったのは35%強でしたが、特に女性では42.0%と、男性の30.7%に対して明らかに高率だったと報告しています(p<0.001)。じゃあ、どういう主訴で受診しているかというと『顎、頸部、肩または背中の痛み』『胃部不快感』『軽い息苦しさ』『発汗』『インフルエンザ様症状』などのわかりにくい症状ばかりです。確かに、ハリソンでは『右肩から腕への放散痛』のオッズ比が4.7、『両肩から腕への放散痛』のオッズ比が4.1、『発汗』のオッズ比が2.0、『悪心・嘔吐』のオッズ比が1.9と報告していますが(Harrison’s Online Chapter 13. Chest Discomfort.)、救急外来ならいざ知らず、一般の外来で「肩が痛い人は全員心カテだ!」なんて訳にはいきません(~_~) ちなみに、この傾向は若年層ほど有意に認められています。胸痛を訴えない心筋梗塞の男性に対する女性のオッズ比は、45歳未満で1.30、45~54歳で1.26、55~64歳で1.24、65~74歳で1.13、75歳以上で1.03なんだそうです(p<0.001)。

 

次に死亡率です。前述のスタディでは院内死亡率自体も男性の10.3%に対して女性14.6%とやはり女性の方が高率で、これに関しても64歳以下の若い年齢層でより認められたと報告しています(p<0.001)。ただ、このスタディでは、女性の方の死亡率が高いことに対しての明確な理由は示されていません。その答えになりそうな報告が、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)など全国27施設より報告されています。心筋梗塞発症から3日以内に入院した1,826人(男性1,366人、女性460人)を対象に実施されたもので、発症から来院までの時間は、男性が平均7.5時間だったのに対し、女性は同9.4時間だったそうです。心カテによる治療効果は、発症から2時間以内が最も高く、その後は次第に落ちることが知られており、この2時間の受診遅れは致命的な訳です。ちなみに、この報告でも女性の死亡率(13%)は男性(6.4%)の2倍と高率であったと報告しています。

 

この受診の遅れの理由は、前述の『女性ホルモンの影響で典型的な胸痛を来たしにくい』といった理由の他、『心筋梗塞は男性の病気』という思い込みがあることも影響しているかもしれません。ただ、個人的には『女性の我慢強さ』も大きく影響しているんじゃないかと思います。「心筋梗塞も大変だったけど、お産の方がよっぽど痛かったわよ」なんて笑われていた女性もいらっしゃいました。また、「救急車を呼ぶなんて恥ずかしいし」なんて、昨今問題になっている『救急車をタクシー代わりに使う人々』に爪の垢を煎じて飲ませたいようなことを言われる方もいらっしゃいます。日本女性の美徳だと思いますが・・・やっぱり我慢は禁物です。男女問わずですが、特に女性の場合は「突然日常の活動が困難になることがあれば、どんな症状でも一度心筋梗塞を疑う」という感覚が必要です。

 

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