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『熱中症』の季節です

熱中症の患者様が増えてきました。もちろん以前もあったんだと思いますが、近年明らかに増加傾向にあります。その背景としてエアコンの増加に伴う熱のこもりやすい建築物の構造の変化や、体温調節機構の破綻などがあります。加えて、最近では『節電熱中症』などという有難くない概念まで出てきてしまいました(ある意味、この方々も被災者ですね)。

 

さてこの熱中症、欧米ではHeat stroke (HS) と言われていますが、中核体温(core body temperature )>40.6°C で、重篤かつ生命にかかわる可能性のある状態を指します(AACN Clin Issues. 2004 Apr-Jun;15(2):280-93.)。つまり、以前の分類の『熱射病』に当たるものです。そのため、海外の文献で熱中症を調べると、どうしても“激しい”記載が多くなってしまい戸惑います(^^ゞ もちろん命にかかわる重篤な状態も起こり得ますが、一般的な対応に関しては、やはり本邦で使われていた分類の方が使いやすいかと思います。

① 熱痙攣(Ⅰ度・軽症)

多量の発汗(Na排出)+水(低Na)のみ補給→Na欠乏性脱水→筋肉の興奮性↑→有痛性攣縮→発汗↑(体温ほぼ正常)、皮膚蒼白→頭痛、嘔吐、低Na血症、代謝性アシドーシス

『激しい運動の後に水だけ飲んだパターン』です。そのようなエピソードから「足がつった!」まで、結構タイムラグがあります。塩分補給をして涼しい所で休んでいただくだけでほとんど治ります。

 

熱疲労(Ⅱ度・中等症)

循環不全+Na欠乏+放熱反応が限界(うつ熱:ただし体温調節能は残存)→体温40℃以下、皮膚蒼白で冷、発汗あり→頭痛、眩暈、嘔吐、脱水、頻呼吸、血圧低下、ときに筋の攣縮

要は『熱射病の前段階』です。水も塩分もなくなる、高度脱水による循環不全です。意識障害はなく、脱水による症状が前面に出ます。一応直腸温は37~40℃までと言われますが、臨床的にはどうでもいいかな。乳酸加リンゲル液or生理食塩水の輸液クーリングが必要ですが、スポーツドリンクが飲めれば積極的に飲んでもらいましょう。

 

熱射病(Ⅲ度・重症)

熱疲労→うつ熱の持続→視床下部体温調節中枢障害→調節能破綻→体温40℃以上→皮膚紅潮、乾燥→多臓器不全(意識障害、ARDSなどの呼吸障害、循環障害、肝腎障害、DIC)

とにかく中枢神経症状!直腸温40℃以上・・・は当てにならないです(来院前にガンガンに冷やしてきているので)。『古典的熱射病』は高齢者や小児に多い、ゆっくり発症するものです。ゆっくりだけど死亡率は40%!とにかく危険な状態です。『熱帯夜が続いた後に、「なんかだるくて・・・」と言って受診するクーラー嫌いの高齢者』や、『赤ちゃんを車に置き去りにして、パチンコに熱中!戻ったら赤ちゃんぐったり・・・』なんかは要注意です!『運動性熱射病』は若年者、特に筋肉隆々のスポーツマンに起こりやすい状態です(筋肉に熱がこもっちゃうんですね)。急激に発症し脱水は著明ですが、皮膚の乾燥は目立ちません。こちらも死亡率10%の危険な状態です。

 

その他

熱失神(Ⅰ度)、熱浮腫、熱テタニー、紅色汗疹(いわゆるアセモ)・・・どれも休んでたら治ります。

これを踏まえた上で、改めてポイントを押さえておきましょう。

・北米気象庁の作成したheat indexでは、28~30℃を境に熱中症の危険度が増すことが示されていますが、「この気温だから熱中症はない」という気温はない!

・かかりやすい因子は高齢、乳幼児、筋肉質、睡眠不足、低血糖、二日酔い、広範囲熱傷、暑さに慣れていない5~6月など。感冒薬、抗アレルギー薬などは、抗コリン作用で「鼻水も汗も出させない」ので禁忌熱があるから「風邪ですね~」は危険!

・腋窩温は発汗を認めたり高齢者でるいそうがあったりすると全くあてにならない。可能ならば直腸温で評価する

40~45℃のぬるま湯を霧吹きで全身にかけ、とにかく団扇で扇ぐ。冷房が効いているとなお良い。氷を使う場合は脇の下、首の横、内もものみを冷やすこと(全身を冷やすと皮膚の血管が収縮して、ますます体内に熱を溜め込んでしまう)。

・高体温に視床下部は関係ない。NSAIDsは代謝が上がることによりますます体温を上げるので禁忌!

熱中症、『恐怖のQuartat』①横紋筋融解症、②高K血症、③低Ca血症、④高乳酸血症(その他、肝障害、DICなど)⇒検査値より何より『コーラ色の尿』をチェック。テステープはヘモグロビンにもミオグロビンにも反応。顕微鏡でRBCが認められなければミオグロビン尿。

・治療は『コーラはウマい(UMAい)!』(『Step beyond Resident』より)。治療が2時間遅れると、予後が大幅に悪くなる。

  • U:Urine Outputをまず確保。>4ml/kg/時間(フロセミドは症状を悪化させる報告もあるので慎重に
  • M:Mannitol
  • A:Alkalization:メイロンを使用し、尿中PH>6.5に維持

熱中症は再罹患しやすい!1日2時間は涼しいところで過ごすよう指示しましょう。2週間は運動禁止!

・予防が肝心。水分、塩分、糖分を十分に補充(1.7mlの汗で1kcalの熱を逃がす)。「口が渇いたら水飲んでね」では間に合いません!

最後に、『熱中症を防ぐための患者様(主に高齢者)へのアドバイス』を載せておきますので参考にして下さい。 

・寒暖計を買って患者さんのベッドのそばや居間におきましょう。

・28℃になったら要注意です。

・水分をたくさんとりましょう。その際はただの水ではなく、ジュースやスポーツ飲料などがよいでしょう。カフェインを含むお茶やアルコールは利尿作用があり逆効果なので止めましょう

・外出や運動は、炎天下や昼間は避け、朝や夕方にしましょう。

・服装に注意しましょう。一般的には合成繊維より木綿の衣類がよいでしょう。また、濃い色は熱エネルギーを吸収するので避けましょう。

・直射日光の入る窓には遮光カーテンやブラインドをつけましょう。

・エアコンのない方は①風邪が通るように、部屋の対角線の位置に空気の抜け道をつくりましょう、②出来れば一番暑い時間帯に、2時間以上は涼しい場所に避難しましょう(エアコンのある友人宅、図書館、公民館、デパートなど)、③夜間も窓や通気口を開けましょう、④できればエアコンを買いましょう。

・エアコンのある方は①最近のエアコンは冷えすぎず、体に優しくなっています(「クーラーは体に悪い」という思い込みをとる)、②28℃を超えたらエアコンを積極的に使いましょう、③夜間も室温に注意し、必要に応じてエアコンを使いましょう、④「ドライ」をうまく使いましょう。

 

これから日に日に暑さも増してきます。みなさん自身も熱中症に気をつけて下さいね(^◇^)

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